赤字決算にも有利選択が必要 その1

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


赤字決算でも、油断は禁物

3月決算法人の申告期限が徐々に近づき、各社において決算作業が本格化する時期になった。今年は、中小企業においても赤字決算の会社が増加するものと思われる。一般的には、赤字決算なら税金の心配はしなくても良いと思いがちだが、消費税は赤字かどうかに関わらず発生するし、赤字決算ならではの注意点もある。今回と次回の2回に渡って、これらの注意点をまとめてみたい。

赤字決算の場合の減価償却

赤字決算であっても、納税者が任意に選択できる項目というものはいくつかある。その中の1つが減価償却である。税務上は、減価償却の計上は任意であるため、償却限度額までなら、どれだけ減価償却額を計上するかは法人の任意である。

赤字決算で減価償却を実施した場合、青色申告法人ならその赤字額は青色欠損金となり、7年間の繰越が認められる。ただし、この赤字額を7年間で黒字と相殺できなければ、赤字額は切り捨てとなってしまうため、減価償却による節税の恩恵は受けられないことになる。

逆に、来期が大幅な黒字になりそうな場合には、今期が赤字でも減価償却を満額計上しておいた方がいい場合もある。

結局、減価償却をどこまで実施するかは、来期以降の利益計画を勘案して判断することになる。また、金融機関から融資を受けている場合には、その影響も考える必要がある。

赤字の場合には一括償却を選択することも

減価償却においては、もう1つ選択肢がある。それは、少額減価償却と一括償却の選択である。資本金1億円以下の青色申告法人等の場合、取得価額が10万円以上20万円未満の資産なら、少額減価償却資産の特例と一括償却を選択することができる。この2つの違いは、償却額の大きさもさることながら、償却資産税の対象になるかどうかという違いがある。30万円未満の少額減価償却資産の特例の場合には対象になるが、一括償却資産の場合には対象にならない。そのため、赤字の場合には一括償却の方が有利になる場合もある。

今年から、中小企業には繰戻還付という選択肢

また赤字といえば、欠損金の繰越と繰戻還付の選択がある。特に、今年の税制改正により、これまでは設立5年以内の中小企業等にしか認められていなかった青色欠損金の繰戻還付が、資本金1億円以下の中小企業等に全面的に認められることになった。平成21年2月1日以降終了事業年度より適用されるため、この3月決算法人は適用対象となる。

両方が適用できる法人は、どちらか有利な方を任意に選択することができる。その際、ポイントになるのは、地方税の取扱いである。欠損金の繰越の場合には、法人税と地方税の取扱いに違いはないが、繰戻還付の場合には、還付されるのは法人税だけで、法人事業税には適用がなく、法人住民税については翌期以降納付すべき税金(法人税割のみ)から控除される。このあたりの違いを総合的に考えて選択する必要がある。
次回は、赤字決算の注意点について、今回以外の項目をまとめてご紹介する。

税務ニュース№123


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