赤字決算にも有利選択が必要 その2

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


前回「 赤字決算にも有利選択が必要 その1」

特殊支配同族会社なら赤字でも要注意

前回に引き続き、今回も赤字決算における注意点をご紹介する。

平成18年度税制改正において、「特殊支配同族会社の業務主宰役員給与損金不算入」制度が導入された。これにより、一定の同族会社の業務主宰役員(主に社長)報酬の一部が損金として認められなくなるケースが出てくることとなった。従って、決算書上は赤字であっても、この規定の対象となれば、法人税等が発生する可能性がある。

対象になる会社はオーナー一族が90%以上の株式を所有し、かつ役員の過半数を占めている場合で、基準所得金額が1,600万円超などの一定の要件を満たす場合である。基準所得金額は原則過去3期の数値で判定するため、前期の段階で当期が対象になるかどうかは既に判明しているので、決算の段階になって慌てないようにしたい。

同様の項目として「交際費の損金不算入」が挙げられる。多額の交際費が原因で赤字になっている場合には、赤字決算でも法人税が発生する可能性がある。

予定納税の還付と繰戻還付

逆に、税金が還付される場合もある。前期が黒字決算で、当期に予定納税をしていれば、当期の所得が赤字なら予定納税額が還付される。なおかつ、青色欠損金の繰戻還付の適用があれば、さらに大幅に税金が返ってくることもある。

売上減少で5,000万円以下なら簡易課税も可

また、赤字決算でもかかってくる税金として、最も重要なのが消費税である。特に、消費税の不課税経費(人件費等)が原因で赤字になっている法人は、多額の消費税が発生する可能性がある。期中が赤字であっても、普段から消費税納税用に積立しておくなどの工夫が要る。簡易課税を選択している場合には、予定納税の還付以外で消費税が還付されることが通常あり得ないため、赤字決算であっても注意が必要である。

ただ、当期の決算で売上が減少すれば、2期後の消費税において、計算方法の有利選択等が新たにできるようになる可能性もある。消費税の納税義務は、原則2期前の課税売上高が1,000万円超であるかどうかにより決まり、同様に2期前の課税売上高が5,000万円以下なら簡易課税が選択できるようになる。

つまり、当期の課税売上が1,000万円以下になれば、2期後は免税、5,000万円以下なら2期後は原則課税と簡易課税の有利な方を選択できるようになる。いずれにしても2期後のことなので、今すぐに判断すべきことではないが、法人にとって最も有利な方法を選択できるよう準備をしておきたい。

その他の注意点

最後に、赤字決算の注意点というわけではないが、関連する項目をいくつか挙げておく。

リストラで支店を閉鎖した法人の場合、法人住民税の均等割の計算に影響がある。支店を置いていると、赤字でも最低限支払わなければならない均等割という税金があるが、期中で支店を廃止した場合には、均等割が月数按分(1月未満端数切捨)となる。

また、従業員が減少して、常時10人未満となった場合には、源泉所得税の納付について、半年に一度の納付で済む「納期の特例」を選択することができるようになる。

税務ニュース№124


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