小規模宅地等の特例が縮小、今後の相続に大きな影響

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。

相続・贈与

2010.01.12


「遺産取得課税方式」は今後の課題

昨年12月22日に、政府より平成22年度税制改正大綱が発表された。今回は、その中から小規模宅地等の特例の改正について取り上げる。尚、大綱の内容は国会を通過するまでは最終決定ではないため、ご了承頂きたい。

今回、平成22年度税制改正において小規模宅地等の特例が改正される運びとなったが、実は、以前から相続税の大改正が検討されてきた。実際、一昨年前には、平成21年度税制改正において相続税の大改正を行うべく準備がされていたのだが、結局諸々の理由により改正は見送られた。そのときには、現在の「法定相続分課税方式」を「遺産取得課税方式」に改めるなど、相続税の根本を大きく変える大改正が検討されていた。

しかしその後、政権交代があった影響もあり、そのとき検討された改正自体は今回の平成22年度税制改正大綱にも盛り込まれていない。その代わりというわけではないが、今回の大綱に盛り込まれたのが、この小規模宅地等の特例の見直しである。

小規模宅地等の「ただ乗り」はできなくなる

小規模宅地等の特例というのは、居住用宅地や事業用宅地などのうち、一定の要件を満たすものに対して、相続税評価額の80%や50%の評価減(面積制限あり)を認める制度である。相続人等による居住や事業の継続を配慮するという趣旨で設けられている制度であるが、その趣旨から外れるようなものも現行では特例の対象となる、という問題があった。そこで平成22年4月1日以後の相続又は遺贈において、次の改正が実施される見通しとなった。

(1)相続人等が相続税の申告期限まで事業又は居住を継続しない宅地等(現行200㎡まで50%減額)を適用対象から除外する。

(2)一の宅地等について共同相続があった場合には、取得した者ごとに適用要件を判定する。

(3)一棟の建物の敷地のように供されていた宅地等のうちに特定居住用宅地等の要件に該当する部分とそれ以外の部分がある場合には、部分ごとに按分して軽減割合を計算する。

これまでは、被相続人が居住していた宅地というだけで50%減となったり、特例要件を満たさない者でも要件を満たす者と宅地を共同相続すれば80%減の特例が受けられたり、といういわば「ただ乗り」問題が発生していたが、この改正により「ただ乗り」はもうできなくなる。

もう1つの「ただ乗り」問題は未解決

ただし、この改正により全ての「ただ乗り」問題が解決したわけではない。現行の相続税は法定相続分課税方式になっているため、相続税の計算は、全ての相続人等が取得した相続財産をいったん全て集計した上で全体の相続税を計算し、その金額を各相続人等に按分する仕組みとなっている。そのため、小規模宅地等の特例で評価減された部分も結果的には各相続人等に跳ね返ることとなり、そこでもう1つの「ただ乗り」問題が発生している。この問題は、冒頭の「遺産取得課税方式」を導入しない限り解決しないが、その改正の行方は今のところ不明である。

税務ニュース№158


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