事務所賃借に伴う権利金は一時の費用にはならない

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


権利金は一時の費用にはならない

一般的に法人が建物等を賃借する場合には、契約により保証金を支払うケースが多い。その契約には、「保証金のうち退去時には○%は返還しない」と記載されていることがある。

この場合、保証金のうち退去時に返還される金額相当額は保証金として資産計上する。一方、保証金のうち返還されない金額相当額(いわゆる権利金)はどのように処理すればよいのか迷うところであるが、税務上は一時の費用とはならず、繰延資産として資産計上し、その効果の及ぶ期間において費用化する。

法人税法上の繰延資産

法人税法では、法人が支出する費用のうち支出の効果がその支出の日以後1年以上に及ぶものを繰延資産とする。具体的には、会計上の繰延資産である株式交付費・社債等発行費・創立費・開業費・開発費と、次のような法人税法上の繰延資産がある。

1.公共的施設等の負担金:アーケードの日よけなど

2.資産を賃借するための権利金等
(1)建物を賃借するために支出した権利金(更新料を含む)、立退料など
(2)電子計算機その他の機器の賃借に伴って支出する引取運賃、関税、据付費用など

3.役務の提供を受けるための費用:ノウハウ設定の頭金など

4.広告宣伝用資産を贈与した費用:看板、ネオンサイン、ディスプレイケースなどの贈与費用

5.その他自己が便益を受けるための費用:同業者団体への加入金など

償却期間

会計上の繰延資産については、原則として償却期間がそれぞれ定められているが、随時償却が可能であるという特徴がある。開業費を例に挙げて随時償却の説明をしよう。開業費30万円(償却期間は5年で定額法)の場合、1期目に30万円×12/60=6万円を償却、2期目に30万円×12/60=6万円を償却、3期目に期首未償却残高18万円の全額を償却することも可能であるし、1期目で全額30万円を償却することも可能である。

一方、税法独自の繰延資産については、償却期間及び償却方法ともに定められている。つまり、償却限度額を超える部分については、法人税法上は費用とすることはできない。例えば、権利金50万円を法人が一時の費用としても、税法では5年間(賃借期間が5年未満で、更新時に権利金等を支払う契約になっているときは、その契約期間)で費用化することになり、減価償却超過額については税金の計算上は費用にならない。

ただし、支出額が20万円未満の少額な繰延資産については、一時の費用とすることができる。中小企業者等には、取得価額30万円未満の減価償却資産について一時の費用とする制度があるが、繰延資産については20万円未満となっているので、間違いのないようにされたい。

また、償却し忘れも散見されるので、再度ご確認されたい。

税務ニュース№177


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