経産省、来年度税制改正に中小企業への税額控除等の拡大を要望

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


平成20年度税制改正に向けて動き出す

今年も後半戦に入り、猛暑の夏が続く中、早くも来年の税制改正に関するニュースが飛び込んできた。経済産業省は平成20年度税制改正に、中小企業への税額控除等の優遇制度の拡大を要望することで方針を固めたというのだ(日本経済新聞8/12朝刊)。

具体的には、以下の3つの制度が要望の対象となっているようだ。

<法人税>
1.人材投資促進税制(教育訓練費の額が増加した場合の税額控除)
2.情報基盤強化税制(情報基盤強化設備等を取得した場合等の税額控除)

<相続税>
1.事業承継税制(特定事業用資産の特例)

以下順番に見ていくことにしよう。

人材投資促進税制~「増加要件」の撤廃

平成17年度税制改正によって、新たに「人材投資促進税制(教育訓練費が増加した場合の税額控除)」が導入された。この制度は、対象事業年度の一定の教育訓練費の額が、直前2期分の平均額を超える場合に、その超過部分の25%を法人税額から控除(ただし、対象事業年度の法人税の10%が限度)できる制度である。

この制度には、一定の中小企業者向けにさらに特例があり、一定の教育訓練費増加割合が40%以上の場合には、対象事業年度の教育訓練費の20%を、増加割合が40%未満の場合には、対象事業年度の教育訓練費のうち、「増加割合×50%」相当額を税額控除できる(ただし、対象事業年度の法人税の10%が限度)。

しかしこの制度は、原則として毎期「教育訓練費が増加していくこと」を前提としているため、その部分でのハードルが高く、中小企業の利用実績は年数十億円にとどまっている。

経済産業省は、このハードルを低くするために、「教育訓練費が増加していくこと」という要件を外し、増減に関係なく、教育訓練費の総額の10%を税額控除できるよう要望する方針である。

情報基盤強化税制~「取得価額要件」を緩和

要望の2つ目は、情報基盤強化税制(情報基盤強化設備等を取得した場合等の税額控除)についてである。これは、平成18年度税制改正によって、それまでのIT投資促進税制に代わって創設された制度だ。

一定のOS(パソコン基本ソフト)やデータベース管理ソフト等を購入やリースした場合に、購入の場合には取得価額の7%、リースの場合にはリース総額の4.2%を税額控除(ただし、対象事業年度の法人税の20%が限度)できる。

ただしこの制度では、資本金1億円以下の中小企業の場合、対象資産を1事業年度で300万円以上購入しないと適用されない(リースの場合にはリース総額が420万円以上)。

中小企業にとって300万円や420万円というのは結構高いハードルであるため、これについて経済産業省は、購入の場合には70万円以上、リースの場合には100万円以上という要件緩和を要望している。

事業承継税制~「控除率」のアップ

最後は、非上場の同族株式についての事業承継税制についてである。現在、一定の同族株式を相続した場合には、課税価格が10%減になる「特定事業用資産の特例」という特例がある。しかし、経済産業省は相続税の負担が重く、廃業している同族会社は多いと判断し、この特例を10%減から80%減に変更するよう要望に盛り込む予定だ。

ただし現状の要件のままで、控除率だけを10%から80%にしてしまうと、その減税効果は数百億円規模になってしまうため、事業継続要件(5~7年)や雇用継続要件(従業員の80%以上の雇用を確保する)などの要件追加とセットでの要望になるようである。

尚、現段階ではあくまで経済産業省の要望というだけなので、決定事項ではない。今後の展開に十分注意して頂きたい。

税務ニュース№41


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