国外中古建物を使った節税に、会計検査院が意見

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


会計検査院から見る富裕層の税負担軽減

国外財産調書や国外転出時課税制度など、富裕層に対する課税強化が進められているが、目を光らせているのは国税庁だけではない。

会計検査院は、平成28年11月7日に「平成27年度決算検査報告の概要」を公表した。それによると、会計検査院は平成23年分から25年分までの延べ28,349人に係る所得税の確定申告書等を対象に検査を行った。

その結果、建物の状況を把握できた延べ3,376人の納税者について、25年分の不動産所得に損失が生じている者は、国内に所在する建物のみを所有している者のうち中古等建物を所有している者が321人のうち42人となっているのに対して、国外に所在する中古等建物を所有している者が153人のうち129人となっており、国外の中古等建物を使った税負担軽減の実態が明らかにされている。

国外建物を使った減価償却のカラクリ

国土交通省の推計によると、住宅を建築してから滅失するまでの平均年数は、日本が約32年であるのに対して、アメリカは約66年、イギリスは約80年となっており、日本よりも長期間使用されている状況となっている。一方、日本の戸建住宅は、築後20年までで価値が大きく低下するといわれるが、アメリカ及びイギリスの戸建住宅は、中古住宅と新築住宅との価格差が小さい。

また、減価償却費の計算については、建物の所在が国内か国外かに関わらず、同一の耐用年数が適用されるが、中古建物については法定耐用年数に代えて、合理的な使用可能期間を見積もる見積法か、それが困難な場合は簡便法により計算することが認められる。

つまり、国外の比較的高額の中古建物を取得し、中古建物の耐用年数により償却することで、多額の減価償却費が発生し、不動産所得に損失が生じる。その損失は、結果として他の所得があれば損益通算される。

最終的にその建物を売却する場合も、日本と違い比較的高額で売却できる上、譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える場合は、20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の税率で済む。

こういった中古建物の減価償却費の実態について、会計検査院は「有効性及び公平性をを高めるよう」警鐘を鳴らしている。過去の実績からいうと、会計検査院からの指摘を受けた項目は、その後の税制改正につながるケースが多いため、今後の動向に注意しておきたい。

参考:会計検査院「国外に所在する中古の建物に係る所得税法上の減価償却費について」

https://www.jbaudit.go.jp/report/new/summary27/pdf/fy27_tokutei_02.pdf

税務ニュース№449


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