時限措置である人材投資促進税制

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


人材投資促進税制の概要

わが国の産業競争力の基盤である産業人材を育成・強化する観点から、人材投資の減少傾向を拡大に転じさせるとともに、企業・個人事業者における戦略的な人材育成への取組を強力に後押しするため、人材育成に積極的に取り組む企業・個人事業者について、教育訓練費の一定割合を法人税額・所得税額から控除する制度が平成17年から導入された。この制度は、支出した教育訓練費が経費となったうえで、さらに税金の計算上教育訓練費の一定割合分の税金をまけてくれるという一粒で二度おいしい制度となっている。

適用対象者は青色申告書を提出する法人又は個人事業者で、適用期間は法人については平成17年4月1日から平成20年3月31日までの間に開始される事業年度、個人事業者については平成18・19・20年分の所得に係る申告において適用される(3年間の時限措置)。

制度の内容

この人材投資促進税制は基本制度と中小企業者の特例があり、中小企業者の場合はどちらか有利選択ができる。(説明の簡便上、法人を前提とする。)

・基本制度 
(当期教育訓練費の額―直前2期分の教育訓練費の平均額(A))×25%=特別税額控除額(上限は当期の法人税額の10%)

・中小企業者の特例
(当期教育訓練費の額―(A))÷(A)=教育訓練費増加割合
教育訓練費増加割合×0.5=税額控除率(上限20%)
当期の教育訓練費の総額×税額控除率=特別税額控除額(上限は当期の法人税額の10%)

計算式でもわかると思うが、中小企業者の場合は損金経理した教育訓練費の総額そのものに一定割合を乗じた法人税額を控除してくれる。その上、地方税である法人住民税法人税割の計算においても、当該制度における税額控除額に相当する金額を納めなくてもよいので節税効果は大きい。

教育訓練費の範囲

本税制の対象となる教育訓練費は、使用人の職務に必要な技術又は知識を習得させ又は向上させるために支出する費用である。自社で行なう研修に係る費用としては、外部講師謝金・外部施設使用料等があり、他社が行なう研修に係る費用としては、研修委託費・外部研修参加費等がある。人件費・交通費・減価償却費は教育訓練費には含まれないので注意が必要である。

教育訓練の対象者は使用人

この制度の適用対象者は、使用人限定である。使用人とは、正社員、契約社員、パート・アルバイトその他対価を受け取って業務に使用される者である。つまり、役員・使用人兼務役員、個人事業主、役員又は個人事業主と特殊な関係にある者、入社予定者は対象外となる。

通常の場合、中小企業者の役員や従業員は親族が多く、その親族が営業から販売、経理全般を管理していることが多いが、その場合は当該制度を受けることはできない。

適用を受ける前に確認しておこう

人材投資促進税制の適用を受けるには、「教育訓練費」という勘定科目を設定すると管理が容易となる。というのは過去2期分の教育訓練費に該当する金額を集計し、当期にいくら以上教育訓練費として支出したら当該制度を受けることができるのか把握しておく必要があるからである。つまり、人材投資促進税制は、過去2期分の教育訓練費の平均額に比し、当期に増加していないと受けることができないのだ。この件については、経済産業省の平成20年度税制改正要望にも「増加要件」の撤廃が記載されている。少しでも使い勝手のよい税制になることを中小企業者の一人として要望する。

税務ニュース№48


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