消費税改正、注意すべきは税率だけではない

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


税制調査会始動

今年は、自民党税制調査会、政府税制調査会ともに、例年より早く議論を開始している。先日の朝日新聞では相続税改正の話題が一面で取り扱われていた(「遺産取得課税方式になるとどうなるか」を参照)。

一方、いよいよかと思われた消費税増税の方は、今のところ、目立った動きはないようだ。消費税の改正がいつ行われるか、というのは全くわからないが、消費税については、税率アップ以外にも個人的に気になっていることがある。それは、小規模事業者の納税義務の免除についてである。

昔は、株式会社といえば納税義務者

現在の消費税では、その期の消費税について納税義務があるかどうかは、その2年前の期、つまり前々期の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかによって決まる仕組みとなっている。

ところが、新たに会社を設立した場合、1期目、2期目というのは2年前の期というのが存在しない。そのため、この期間の納税義務は、期首の資本金の金額によって判定されることとなっている。期首の資本金が1,000万円未満なら免税、1,000万円以上なら課税、となる。

会社法が改正される前は、特例による設立は可能であったものの、株式会社を設立するには、原則1,000万円の資本金が必要だった。そのため、株式会社を設立すると、自動的に1期目から課税事業者となってしまっていた。確かなことはわからないが、“1,000万円”という基準も恐らくそういう背景から設定されたのではないだろうか。

「特殊支配同族会社の業務主宰役員給与損金不算入」の導入

しかし、現在は会社法が施行され、資本金1円でも株式会社が設立できるようになった。いわゆる1円起業が特例ではなく、恒久措置として設けられた。それにいち早く反応したのが、法人税の改正だった。「特殊支配同族会社の業務主宰役員給与損金不算入」、いわゆる「社長報酬損金不算入」と呼ばれる大改正がそれである。

個人事業者が法人成りし、会社から役員報酬として給料をもらう形にすると、給与所得控除の適用が受けられるため、一般的には節税となる。資本金1円からでも法人を設立できるとなると、法人成りが急増し、税収が減ってしまうという事態が予想されたため、上記の改正が行われたわけだ。

消費税免税制度の今後

同様に、資本金を1,000万円未満で設立する法人が増えると、これまでの株式会社では1期目から徴収できていた消費税が、徴収できなくなってしまう。実際に、現在周りで設立されている法人も資本金1,000万円未満という場合が多く、設立後2年間は消費税免税の恩恵に与っている。

中小企業経営者からすると、この2年間の消費税免税制度のおかげで、当初の資金繰りは非常に助かるため、ありがたい制度であることは間違いない。

ただ、「社長報酬損金不算入」の導入への流れを見ていると、消費税のこの免税制度がいずれ改正になるという可能性も考えられる。もちろん、現段階では全くの白紙であるが、今後の行方には十分注意したい。

税務ニュース№87


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