払済保険による節税に、国税注目か?

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


一難去ってまた一難?

令和になってから、国税当局は全額損金となる定期保険等についての通達改正や、低解約型保険による名義変更についての改正など、抜本的な改正を行い、生命保険を使った過度な節税について規制してきました。

大きな改正が続いたため、今はこれで少しひと段落した感がありますが、国税当局は、さらに注目している手法があるようです。

それが、払済保険の活用による節税です。

税務関係の業界紙の情報として、先日記事が取り上げられていました。

払済保険とは?

そもそも、払済保険とは、どのような保険のことをいうのでしょうか。

払済保険とは、保険料の払込みを中止し、変更時の解約払戻金を一時払の保険料に充当して今までの契約の保険期間を変えずに保障額の少ない保険に変更することをいいます。

生命保険を払済にすると、以後の保険料を支払わなくてよくなりますが、保険契約自体が無効になるわけではありません。

保障額は減りますが、保険期間は払済以前と変わらないままです。

また、保険契約を払済にしても、解約返戻金は増え続けていきます。

保険を払済にした場合の税務処理

生命保険の払済処理は今に始まった話ではなく、以前から認められている処理です。

税務処理も以下の通達によって、決められています。

法人税基本通達9-3-7の2 払済保険へ変更した場合
『法人が既に加入している生命保険をいわゆる払済保険に変更した場合には、原則として、その変更時における解約返戻金相当額とその保険契約により資産に計上している保険料の額(以下9-3-7の2において「資産計上額」という。)との差額を、その変更した日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入する。ただし、既に加入している生命保険の保険料の全額(特約に係る保険料の額を除く。)が役員又は使用人に対する給与となる場合は、この限りでない。

(注)1 養老保険、終身保険、定期保険、第三分野保険及び年金保険(特約が付加されていないものに限る。)から同種類の払済保険に変更した場合に、本文の取扱いを適用せずに、既往の資産計上額を保険事故の発生又は解約失効等により契約が終了するまで計上しているときは、これを認める。
(以下省略)』

◇抜粋:国税庁|第3節 保険料等(払済保険へ変更した場合) 9-3-7の2
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_03.htm

払済処理も、解約した時と同様に解約損益を計上するのが原則ですが、(注)1に書かれているように、同種類の払済保険に変更する場合には、この処理を省略することができます。

※本来、この注1の特例処理(解約損益計上不要)を適用できるのは、養老保険と終身保険だけでしたが、令和元年6月の通達改正で、定期保険や第三分野保険等が追加された経緯があります。

払済のどこが問題なのか?

今、問題になっている手法は、生命保険加入後数年で払済とし、上記通達の特例処理で解約損益は計上せず、そのまま時間の経過とともに解約返戻金を増加させ、100%近くになった時点で解約する、というものです。

解約返戻金による益金は、役員退職金などの損金を計上することで相殺させます。

この手法は、当初の加入時から払済にすることを前提として実行される場合が多く、当局もどうやらその点に疑問を感じているようです。

というのも、直近の改正後の定期保険の経理処理は、最高解約返戻率によって損金算入割合が決まる仕組みになっており、当初から払済を前提として、解約返戻率100%近くを想定しているなら、損金算入割合は変わってくるのでは、と考えていることが予想されます。

さらに、払済時に損益計上しているわけではないため、解約時まで課税を受けないことになります。そこも現行通達通りだとはいえ、国税が疑問を感じる要素の1つとなっているのでしょう。

実際に何らかの改正が行われるのかどうかも含め、現時点では全く不明ですが、当面注意してみておく必要がありそうです。

この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№812


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