下がる法人税、広がる法人税

(注)執筆当時の法律に基づいて書いていますのでご利用は自己責任でお願いします。


下がる法人税~成長戦略発表、法人実効税率は数年で20%台へ

先日6月24日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2014」いわゆる骨太の方針2014で、法人税率引下げについて下記のように書かれています。

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〔法人税改革〕
日本の立地競争力を強化するとともに、我が国企業の競争力を高めることとし、その一環として、法人実効税率を国際的に遜色ない水準に引き下げることを目指し、成長志向に重点を置いた法人税改革に着手する。
そのため、数年で法人実効税率を20%台まで引き下げることを目指す。この引下げは、来年度から開始する。
財源については、アベノミクスの効果により日本経済がデフレを脱却し構造的に改善しつつあることを含めて、2020年度の基礎的財政収支黒字化目標との整合性を確保するよう、課税ベースの拡大等による恒久財源の確保をすることとし、年末に向けて議論を進め、具体案を得る。
実施に当たっては、2020年度の国・地方を通じた基礎的財政収支の黒字化目標達成の必要性に鑑み、目標達成に向けた進捗状況を確認しつつ行う。
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まず、数年で法人実効税率を20%台まで引き下げること、その引下げは来年度から開始するとなっています。20%台まで引き下げるには、約5~6%の引下げが必要です。「来年度から開始する」ということは、年に2%程度の引下げを視野に入れているように受け取れます。

次に、税率引下げの財源については、「課税ベースの拡大等による恒久財源の確保」となっており、税率を引き下げる代わりに、薄く広く課税する方針が窺えます。

時期については、「年末に向けて議論を進め、具体案を得る」となっており、今回の成長戦略は税率引下げの方向性の打ち出しに留め、具体案は年末の税制改正大綱に盛り込まれる形になりそうです。 

広がる法人税~法人税の課税ベースを拡大

中小企業経営者のみなさんは、「税率引下げ」よりも「課税ベースの拡大」の方が気になるのではないでしょうか。上記の通り、最終的には年末の税制改正大綱の発表を待たなければなりませんが、政府税制調査会などの資料から改正の可能性の高そうな項目を探ることはできます。

そこで、実際に改正になるかどうかはわかりませんが、現時点で議論のテーブルに乗っているものをご紹介しようと思います。

□機械装置の定額法一本化
現在、機械装置については法定償却方法が定率法に設定されているため、多くの法人が定率法を選択していますが、定額法への一本化が検討されているようです。どちらもトータルで償却できる金額は変わりませんが、もし改正が実現すれば、初期の償却費は減ってしまいます。


□外形標準課税の適用拡大
法人事業税には外形標準課税という制度があり、現在は資本金1億円超の法人はこの制度で課税されています。外形標準課税では、法人事業税は「所得割額+付加価値割額+資本割額」で課税されます。つまり、赤字でも付加価値や資本金などの規模が大きければ、たくさん課税される仕組みになっています。

この外形標準課税制度を中小企業にも広げようという議論がされているようです。赤字法人の税負担が増えるかもしれません。


□欠損金の繰越控除縮小
法人の場合、赤字(欠損金)は9年間繰り越すことができます。資本金1億円以下の中小企 業等については、繰越欠損金の控除額に制限はありませんが、資本金1億円超の大企業等については、欠損金控除前の所得金額の8割までしか、繰越欠損金の控除が認められていません。

今回の法人税率引下げに伴い、この80%の使用制限をさらに厳しくしようという話が出ているようです。中小企業にも影響があるかもしれません。


□中小法人の法人税率特例
現在、資本金1億円以下の中小企業等については、所得金額800万円以下の部分に対しては、法人税率が25.5%から15%に優遇されています。この優遇制度は、資本金のみが基準となっていますが、資本金が少なくても規模の大きい会社は存在し、資本金だけで優遇税制の適用を判断することが不公平だという議論があります。実際に、会計検査院もこの点を指摘しています。

そのため、この特例の見直しが議論されているようです。その他の中小企業特例にも影響があるかもしれません。


※今回の内容は決定事項ではありません。あくまで議論の途中経過に過ぎませんので、ご了承下さい。

この話が経営者・資産家の皆様のお役に立つことができれば幸いです。

メール通信№393


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